犬は何かを知っている

 1ヶ月前位だったか、ATMで順番待ちをしていたら犬が外にいた。小型と中型の真ん中当たりの大きさで茶色の雑種(だと思う)。

 その犬を眺めている俺をめざとく見つけたその犬は猛然と俺に突っかかってきた。鼻息が荒く、2足で立ちながらべろべろ舐めてくる。

 その犬の風貌はのんにそっくりだった。だからその犬をおれはじっと眺めていた。のんが今頃生きていればどんな風に俺に接してくれるのだろう。どれだけ老いぼれになって静かにしているのだろうと考えてしまう。

 そんな雰囲気を察したのだろうか、あまりにも哀れそうな雰囲気を漂わせていたのだろうか。その犬は俺を勇気づけるかのように接してくれたのだろう。

 犬は人間には感じることのない何かを持っているのだなと思った瞬間だった。シックスセンスというのだろうか。人間が出していて人間が感じることの出来ない何かを敏感に察して対処をしてくれる。それが犬なのだろうと思う。

 その犬の鼻はのんと同じように湿っていて、久しぶりに犬に触れた感じが今でも残っている。

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それから

 のんが天国へ行った年の冬だったろうか。弘前の附属幼稚園近くの公園で雪合戦の練習をしていた時、のんに似た犬とすれ違った。

 雪合戦の練習?と思われるだろうが、国際規格のルールがあり、れっきとしたスポーツ競技である。北海道では毎年全国大会がある。俺らも何度か出場し、予選リーグを突破したことはあった。女子チームは5位になったこともあった。

 話はそれてしまったが、のんに似た犬はちょっと太っていたが、顔はそっくりだった。すれ違いざまにその犬と俺が数秒目を合わせた位だからお互いに何かを感じていたのだと思う。それくらいに驚いた。

 それ以来その犬には会っていない、名前も知らないその犬だが、のんが頑張ってこの世で俺と会うチャンスをくれたのだろうと思っている。

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のんが死んだ

 今から10年以上も前、俺が大学2年の5月だったか。のんが死んだという電話が入った。

 死因はフィラリア。当時の俺は「フィラリア?」という程度のお粗末な知識しか持ち得ず、あっさりと死んでいったという連絡が現実のものと受け止めることが出来なかった。

 俺がのんと一緒に過ごした時間はほぼ3年。小さいぬいぐるみのような、ころころとした犬が我が家にやってきてのん自身は不本意だったかもしれないが、家族の一員として過ごしてくれた。

 のんには狭い世界しか見せることが出来なかった。

 夏休みに実家に戻った時には既にのんの犬小屋は処分され、のんがいたという跡形は何所にも見つけられなかった。

 今実家の俺の空虚な部屋には1996年(だったと思う)のカレンダーが貼られている。左右にカレンダーが書かれ、真ん中には多分照れているだろう赤い首輪を付けたのんの写真が飾られている。

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犬も平気でうそをつく

 というタイトルの本が書店にあった。どうやら躾の本のようだが興味があったので買おうかなと思ったが、表紙の犬があんまり可愛くないのでやめた、というよりのんの方が数倍可愛い。

 犬は果たしてうそをつくのだろうか?そもそもうそという概念があるのか。のんは俺にうそをついたことがあるのだろうか。俺はだまされたことがあるのだろうか。のんはフェイントをかけて俺をだましにかかったことがあるのだろうか。

 というより、のんにだまされても問題なし、むしろだませ。だまして欲しかった。

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水を嫌う

 のんは水が嫌いだった。多分、買い主の人間が彼女を水嫌いにさせてしまったのだろうと思う。とにかく水際に行きたがらない。橋を渡るにしても際に行こうとしても尻込みをしてしまい全く駄目。だっこをして水際に連れて行くと「ウォ!!」とおっさんのような声を出し、とりあえず視界からみずが見えないように逃げようとする。

 こんな犬にしてしてしまった原因は、風呂場でのんを洗ったことから始まる(と思っている)。のみもいるだろうし、臭いも出てくるだろうしせっかく女の子なのだから身だしなみはきっちりしようぜっ!!、と言うことで洗ってやろうと風呂場へ連れて行った。

 ボディーシャンプーできっちり洗ってやった。毛が抜けるくらい擦ってやった。頭上からシャワーを浴びせてやった。そうしたら全身を震わせ、水気を取り、機嫌が悪そうに、静かにのんは外へ出て行った。耳に水が入ったのでしょうか?鼻、目、口に水が入ったのでしょうか?俺にはわからなかったが、のんはそれ以降水を嫌いになり、身体を洗わせてくれることも無くなった。

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見てはいけない光景

 久しぶりに更新をします。にも関わらずお下劣な内容です。

 食べたら出します。当たり前の生理現象です。私も非常に快調です。恐ろしいくらいです。宿便なんて俺には関係無いぜっ!!というくらいです。

 何時の日だったか、のんと散歩に出掛けた。いつものようにヒモを持っていない方の手にはウ○コをかたづけるプラスチックの容器とポケットにはドッグフードを入れて。

 のんが排便をする光景は数えるほどしか観たことがない。見ると行っても決定的瞬間はのんに失礼なので見ないようにしている。のんも「見ないでくれっ。」と言わんばかりに視線がうつろでキョロキョロして挙動不審なところがあるので恥じらいがあるんだろう(と勝手に想像している)。が、一回だけ決定的な瞬間を見た事がある(見てしまった)。

 その光景は「オイオイ、のんよそんな格好では辛くないのかい?」と思わず声をかけざるを得ない光景であった。

 犬は通常四本の足で生活をする。のんはリズミカルに歩を進め前へ進む、四本足で・・・。見てはいけない光景のその時は、のんは前足だけで立ち、後ろ足は宙に浮かび震えながら排便をしていた(ように俺には見えた)。平行棒を体操選手が腕で全体重を支え足をV字にしながらポーズを決めている姿そのものでのんは排便をしていた、それも小刻みに震えながら。

 その行為の後は何事も無かったかのように俺とのんは東北本線の線路を横切りいつもの散歩道を進んだ。

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犬がしゃべる日

 ウルウルした目でこちらを見つめられると心臓がばくばくする。人間の感情を察知する能力があるのか、普段から暇に任せ人間観察をしている成果なのか俺の心をキャッチする能力には長けていたのん。

 ある日、のんは気分が乗らないのかご機嫌斜めなご様子です。ちょっとイラついているようなそわそわした様子が見えた。俺も暇だからちょっと相手をしてやろうか(してもらおうか)と近づいたところ、「◎×△■○※○◎▲◇・・・」と一生懸命のんが話を始めた。

 くだを巻くようなその勢いはこれまでののんとは少々趣を変え、心に溜まっている鬱憤を俺に話そうとしていたように見えた。

 但し、俺には何を言っているのかはさっぱり理解は出来ない。その後、何事もなくいつも通り、いつものルートを小走りに散歩へ出掛けた。

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雄と雌

 犬の雄雌の見分け方は「目が細長い犬が雄でパッチリした目をしているのが雌だよ」と言われてナルホドと思った。のんは確かに目がパッチリとした犬だった。俺はおしりの穴がバッチリ見えているのが雄で、毛で隠しているのが雌だと思っていた。のんがうっそうした毛で覆われていたし。女の子は恥ずかしいから隠しているんだ、遺伝ってすげぇと感心していたがそうでもないらしい。

 のんがこの世から去って14年が経とうとしています。時間の流れは早いもんです。のんはどこかで俺を観ているのでしょうか。というか観ていて欲しいです。そして時々夢で逢いたいものです。

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のんとの思い出④

 のんは好きなものはドッグフードとタオル。俺が自転車を磨くために雑巾を使っているとすかさず寄ってきて雑巾を持って行く。別の雑巾を持ってきて拭き始めると又寄ってきて奪い去っていく。その後は雑巾と戯れる。最初に持って行った雑巾は動でもいい存在のようなのだ。

 ドッグフードも大好き。但しこれはおやつ程度。普段は俺らと対して違わないものを食べていた。相当薄味で。確かタマネギが混じっているものは省いていたはず。裏を返せば普段の食事に満足していなかったのか。ドッグフードも安いものを食わせると速攻で下痢をした。これほど如実に実験が出来るとはと思ったもんだ。なのでドッグフードはそこそこのものを食べさせていた。でも、散歩の途中で何個か食べさせていた程度なので満足はしていなかっただろう。

 散歩のコースはのんに任せていた。行きたいところに行けばいい。未だ小さかった頃、近くの本屋へ連れて行って、外の郵便ポストに結わえておいて本を買いに行ったことがあったが、その時は中に聞こえるくらい寂しそうな声で泣いた。ちょっと濡れた雪交じりの夕方で、店員さんも苦笑する位だったのでそそくさと本屋を出て、抱いて家路に就いた。散歩をしたのは結局俺だったわけで。

 そんなのんも数ヶ月もすると身体も態度も大きくなり、そんじょそこらのフェイントでは寂しそうなそぶりは一切見せず、むしろ俺が泣きを入れる場面さえあった。ちょっと鎖を外すと速攻で逃げる。ちょっとした広場で鎖を外すと待っていたと言わんばかりに逃げる。こっちは近くにJRの線路があるのでもしかしたらと気が気でない。焦って探すと何てこと無く家の近くにちゃんといる。バカヤロウと思っても通じないし、撫でてやるしかない。人間の負け。

 その時は少しのんの口元が緩んでいたように見えた。

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のんとの思い出③

 のんは女の子。自分でいうのも何だが可愛い犬である。そんじょそこらの雄犬が放っておくわけがない。と人間が勝手に理由を決め、のんは入院の上、手術をすることとした。可愛そうだが今後のことを考えれば申し訳なかった。当時実家には車がなかったのでタクシーの運ちゃんの了解の上タクシーで病院へ行った。付き添いは母。車中のんはゲロッたそうだ。

 入院と手術を含め3日間ほど家にいなかった。そんな短い時間だったがあるものがないと寂しいもんだ。その間中、のんものんで痛い思いをしていたはず。

 家に戻ってきた際もタクシーで戻ってきた。見た目でやる気ながなさそうで辛そうな雰囲気を醸し出していた。見た目の形状も変わっており、お腹の毛が一切剃られ、そこに黒い糸で縫合された傷跡が見えた。フランケンシュタインのキズのようだ。触ると暖かくて何度も撫でた。剃られたそこには赤い斑点のような小さい乳首も発見した、女の子でしたね、のんは。程なく抜糸も済み、いつもののんに戻った。

 今年は戌年。のんが存命であれば何歳だろう?16歳くらいだろうか。相当なおばあちゃんだ。年賀状にのんを登場させた。

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のんとの思い出②

 我が家へやってきた子犬の名前をどうしようかと思った。誰も名付けようとしないのか俺が「名前をつけるなよっ!!」というオーラを出していたのか俺が名前をつけることとなった。

 とりあえず、カタカナがイメージでかつ表記するような名前はつけないことを前提に考えた。

 いざ命名だが結構難儀。何をどうすればいいのかさっぱりわからず数日が経つ。いや実は候補はあった。当時読んでいたマンガの主人公の名前で野明(のあ)というのが。これが反対に遭うのと致命的なのが呼びづらい・・・。

 でも、「のあ」に近い響きは少しでも残しておきたいので「のん」という名前をつけることとした。残ったのは「の」だけだが。

 そこで名前をつけたその日からのんはのんという名前で生活を送ることとなり、その日からそう遠くないある日に「のん」が病院デビューをすることとなる。 (つづく)

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「のん」との思い出①

 彼女は”わ(※注1)”が高校1年の時に我が家へやってきた。というより連れてきた。同じ通りで飼われていた「チャッピー(という名前であったはず)」に2匹の子供が生まれ、その中にものすごく可愛い子どもが居り、時々家に来てたんです、2匹とも(ご飯をもらいに)、白と茶の2匹が。そんな中、無性にそのうちの茶の方が欲しくなり、もらってきたのがのちの「のん」だった。多分お菓子一箱とのトレード劇だったと思う。白い方はやたら重く、そんなに可愛くなかった。

 我が家は過去、亀・金魚・ザリガニ等の小動物は飼っていたが、犬のように体温があり、大声で泣くような動物は初めてだった。当然犬小屋は無く、自作し、ログハウス風のなかなかのものだった。

いざ、我が家へ来た日は余りにも可愛く、外で一人にするのはかわいそうなので部屋の中でダンボール箱の中で寝かせました。まだその日は名前はありません。名前の由来は次回以降。

※注1「わ」というのは地元の言葉で「自分」です。この言葉も最近ある程度広まってきたようなそうでもないような。テレビ画面ではテロップが流れるし。

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